たばこは、百害あって一利なしです。
タバコはこんな症状・病気をひきおこす(喫煙者本人)
分類 | 急性影響・症状など | 慢性影響・疾患など |
呼吸器系 | 咳、痰などの呼吸器症状 | 慢性気管支炎、肺気腫、呼吸機能障害 |
循環器系 | 血圧上昇、心拍数増加、末梢血管収縮、循環障害 手足のしびれ感・冷感、肩こり、首のこり、 まぶたの腫れなどの症状 | 虚血性心疾患、大動脈瘤、末梢血管閉塞症、 脳血栓、くも膜下出血 |
消化器系 | 食欲低下、口臭、その他の消化器症状 | 胃・十二指腸潰瘍、慢性萎縮性胃炎、歯周病 口内炎、白斑症、クローン病、肝硬変 |
癌(がん) | 肺癌、喉頭癌、口腔・咽頭癌、食道癌、胃癌 肝臓癌、膵臓癌、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、 子宮頚癌 | |
中枢神経・感覚器系 | 知能活動能低下、睡眠(就眠)障害 | 脳萎縮、アルツハイマー病?、白内障、難聴 |
その他 | 免疫機能低下、糖尿病血管合併症、骨粗鬆症 皮膚のしわ増加、体重減少、外科手術の予後不良 | |
全身影響 | 健康水準の低下 | 寿命短縮、老化促進 |
また、知らないうちにたばこを吸わない人に大きな迷惑をかけています。
1.30代喫煙者の心臓発作は非喫煙者の6倍にもなる
2.肺がん治療後に禁煙有効
3.「生活不良者」はがんにご注意 コーヒー,たばこ,運動不足など
4.10代からたばこを始めると、肺がんの危険が高まる。
5.他人のたばこで動脈硬化がおこる
6.他人のたばこで赤ちゃんが100グラムも小さくなる
7.親の喫煙が子供の善玉コレステロールを減らす。心臓病を誘発する。
8.喫煙25年以上なら、肺がん発生のスイッチオンされる。
9.喫煙と食道がんを結びつける遺伝子 発病の可能性13倍も
10.間接喫煙でも動脈硬化
11.たばこは耳にも悪い。 難聴の危険度70%高
12.家族の喫煙、妊婦・子にも影響
13.喫煙で痴呆のリスクは増加する。
14.母喫煙で胎児に発がん物質
15.若年男性の喫煙は遺伝子異常の原因になる
16.喫煙で大幅にビタミン Cが減る
17.喫煙者はパニック発作を起こしやすい
18.喫煙者は外傷リスクが高い
19.女性は禁煙が難しい 男性より心理的依存強い
20.喫煙と腰痛に関連性がある
21.喫煙はアルツハイマー病を予防せず
22.禁煙は何歳からでもリスク低下に有効
23.高齢喫煙者は禁煙成功率が高い
24.禁煙後も脳卒中リスクが持続
25.喫煙は筋骨格系にも悪影響 組織壊死から四肢切断の恐れも
26.心発作患者は喫煙やコレステロールに敏感
27.成人にも有害な受動喫煙 喘息、COPD、肺癌などのリスク高める
28. 喫煙は勃起不全のリスク高める
29.術後に禁煙すれば合併症が起こりにくい
30.うつ病で喫煙を始めた人は禁煙するとうつ病が悪化する恐れがある
31.禁煙や節煙すると閉経後女性の骨減少が起こりにくい
32.少量の喫煙でも心血管の損傷が起こる
33.心筋梗塞後に禁煙すると左室機能は保護される
34.多発性無症候性脳梗塞(SCI)の最も重要な危険因子は喫煙である
35.妊婦の喫煙が乳幼児突然死症候群の一因になる
36.受動喫煙で小児の齲歯(むし歯)のリスクが増大する
1995.8.18. 読売新聞 夕刊
30代喫煙者の心臓発作 非喫煙者の6倍(ロンドン)
英医学専門誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル最新号は、30〜40代の喫煙者はたばこを吸わない人よりも心臓発作を起こす可能性が約5〜6倍高い、との調査結果を掲載した。英心臓財団など3団体が、心臓発作による入院患者10、000人余りを対象に聞き取り調査した。調査結果によると50代の喫煙者は心臓発作を起こす確率が非喫煙者に比べ3.1倍、60代で2.5倍、70代で1.9倍と、従来の研究結果とほぼ同じ倍率となった。ところが30代では6.3倍、40代で4.7倍と跳ね上がった。
1995.9.2� �. 読売新聞 夕刊
肺がん治療後の禁煙有効
2次発生率3分の1以下に (国立がんセンターなど調査)
肺がん治療後に禁煙した人の2次がん発生率は、懲りずに喫煙し続けた人の3分の1以下になることが、国立療養所近畿中央病院(大阪府堺市)、大阪府立羽曳野病院、国立がんセンターの共同調査で明らかになり、札幌市で開かれている日本癌治療学会で20日発表された。調査した肺がん患者は、1978年から92年までに近畿中央病院、羽曳野病院で、抗がん剤、放射線治療を受け2年以上経過した70人。このうち治療前に喫煙歴があったのは64人で、治療後31人が禁煙し、33人が喫煙を続けていた。禁煙したグループでは3人に食道がんなどの2次� ��んが発生し、喫煙グループでは11人が肺がん、こう頭がんなどを発病した。一度がんにかかっているという特殊条件を考慮して計算した結果、一般人を1とした場合の相対危険度は、禁煙グループで2.0、喫煙グループで7.2となった。がん治療後の喫煙状況の追跡調査はこれまでほとんどなく、共同研究にあたった国立がんセンターの祖父江友孝がん発生情報研究室長は「治療後の禁煙という比較的短期間の試みでこれだけ差がでる点が重要。喫煙のリスクを改めて示すデータだ」と話している。
1995.9.26. 毎日新聞 夕刊
「生活不良者」はがんにご注意 コーヒー,たばこ,運動不足……
細菌の突然変異、「良好」の倍以上 (阪大医学部� ��授ら調査)
朝食を食べずに出勤し、一日9時間以上働き、定期的にスポーツもしていない。ストレス解消は酒とたばこ。こんな不規則な生活を送っている人は、健康的な生活を送っている人に比べ、発がん性物質を体の中に取り込んでいる割合が高いことが、森本兼嚢・大阪大医学部教授(環境医学)らの調査で明らかになった。来月3日から京都市で開かれる日本癌学会総会で発表する。調査対象は、大阪市内の企業に勤める事務系会社員69人。全員男性で、平均年齢は44歳だった。まず、(1)毎日朝食をとるか。(2)1日7,8時間は眠るか。(3)栄養バランスを考えた食事をしているか。(4)たばこは吸わないか。(5)運動や定期的スポーツをしているか。(6)毎日の飲酒量は日本酒で2� ��、ビールで大ビン2本以下か。(7)1日の労働時間は9時間以内か。(8)自覚的なストレスは多くないか。の8項目についてアンケートし、肯定数がゼロから3をライフスタイル不良(25人)、4〜5を中庸(31人)、6以上を良好(13人)と3つのグループに分けた。さらに、1日分の尿を全員から別々に集め、どれだけ発がん性物質が含まれているかを調べた。培養中の細菌に尿から抽出した物質を加えて突然変異の度合いをみるテストで、ライフスタイル不良グループの尿は、良好グループに比べ2倍以上も突然変異を引き起こした。また、飲食物との関連では、グループに関係なく、日本茶を多く飲む人は、細菌に突然変異を起こしにくく、コーヒーを多く飲む人に変異が多かった。たばこも、喫煙本数が多いほど、� �菌に変異が多く見られた。森本教授は「細菌の突然変異が多いほど、体内に取り込む発がん性物質が多いといえる。これまでの研究で、ライフスタイルが悪いと、免疫能力も低くなることなどがわかっている。8つの健康習慣は、どれだけ病気に近いかの指標になる」と話している。
1995.10.4. 毎日新聞
10代からたばこを始めると、肺がんの危険が高まる。(厚生省が分析 喫煙年数同じでも)
10代でたばこを吸い始めると、20歳以上で吸い始めた人に比べ、同じ喫煙年数でも肺がんになる危険が大きく高まることが厚生省研究班の分析でわかり、3日、京都市で開催中の日本癌学会で発表された。分析を担当したのは、予防 がん学研究所(東京都新宿区)の平山雄所長。厚生省が全国の40歳以上の男女計約26万5千人を対象に17年間にわたり行った「生活習慣と死因」などの調査データを用いた。がんの発病率は、年齢とともに高まる傾向がある。このため、たばこを始めてから35〜39年後に、喫煙者の肺がんによる死亡率が非喫煙者の何倍になっているかで、喫煙開始年齢の影響を調べた。15歳から19歳で吸い始めた場合、35〜39年後の50〜58歳で肺がんで死亡した人は、10万人当たりに換算して年間約36人。同年齢の非喫煙者に比べ、約6.5倍だった。年齢が若くなるにつれて死亡率は高まり15〜16歳で始めた場合、7.8倍となった。20〜34歳で始めると、死亡率は10万人あたり44〜63人で、非喫煙者の約2� ��2.8倍。35歳以上で始めた場合の死亡率は、非喫煙者とかわらなかった。
1996.3.3. 朝日新聞
他人のたばこで動脈硬化がおこる
他人の吸うタバコの煙を吸う受動喫煙で、若い人でも、将来は心臓病に関係する動脈の障害が現れることをオーストラリアのロイヤル・プリンス・アルフレッド病院などのグループが米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの最新号に発表した。グループは、15歳〜30歳の男女で(1)タバコと無関係な26人(2)3年以上、他人の吸うタバコの煙を1時間以上吸っていた26人(3)タバコを毎日吸う26人、の3グループを対象に、腕の動脈の直径を超音波で測り、薬で血流を 多くした時に動脈がしなやかに拡張するかどうか調べた。(1)では平均8.2%拡張したしたのに、(2)では3.1%、(3)では4.4%しか拡張しなかった。タバコの煙を吸うことが、動脈内皮の細胞に影響するためで、動脈にコレステロールがたまるきっかけになる。受動喫煙では能動喫煙以上に血管への障害が現れているようだ。
1997.4.9.
他人のたばこで赤ちゃんが100グラムも小さくなる
自分はたばこを吸わなくても、妊娠中にたばこの煙に囲まれていると、生まれる赤ちゃんは煙のない環境で暮らす場合に比べて小さく、平均体重で100グラム以上の差が出ることが8日、横浜市で開かれている日本産科婦人科学会で報告された。 b>
大阪府環境保健部の島本太香子医師が発表した。家族や同僚の煙にさらされると、日に3−5本吸うのと同じという。こうした「受動喫煙」が妊婦と胎児に及ぼす害の報告はこれまであまりなかった。
1992年から3年間、奈良県内の産婦人科で順調に出産した妊婦を対象に調べた。妊娠中に「喫煙した」人はごくわずかだったが、家族や職場の同僚のたばこの煙にさらされていた受動喫煙の人は全体の6割、約800人いた。この人たちについて、「換気のない部屋にいて、周囲が10本以上吸っていた」「換気のないい部屋で、本数は9本以下」「換気のある部屋にいた」「たまにしか煙にさらされなっかた」に分けた。
赤ちゃんの平均体重は、「換気のない部屋」の2900グラム台が最も軽 く、「換気のある部屋」で3078グラム、「たまにしか煙にさらされない」では3171グラムだった。喫煙しない場合は3140グラムと平均的で、受動喫煙の妊婦の赤ちゃんほど小さかった。また煙にさらされていた妊婦ほど毛髪中のニコチン濃度が高く、赤ちゃんの体重も軽くなる傾向があった。島本医師は「妊娠をきっかけに禁煙しても、環境によっては喫煙しているのと同じ。毛髪中のニコチン濃度を調べ、胎児の発育への影響を知ることもできる。」と話している。
1997.9.3. 西日本新聞 夕刊
「親の喫煙、子に報い…」善玉コレステロールを減らす。心臓病誘発も。 米医師グループ調査
【ワシントン2日共同】親がたばこを吸うと間接喫煙の影響により、子供の血中で動脈硬化を防ぐ働きがある「善玉コレステロール」と呼ばれるタンパク質(HDL)の量を減らすため子供が心臓病になる危険が高まる、と米ボストン子供病院のエリス・ヌフェルド博士らの研究グループが二日発行の米心臓協会雑誌に発表した。
同研究グループは、約百人の子供(二ー十八歳)を対象に血中のコレステロール値、さらにこのコレステロール値や中性脂肪値を下げたり抗動脈硬化作用があるとされるHDL値などを調べた。その結果、家族が喫煙しない子供の平均HDL値は血液一〇� ��ミリリットル当たり四三ミリグラムだったのに対し、家族が喫煙する子供は同三八ミリグラムと低かった。一方血中コレステロール値は喫煙家族の子供は非喫煙家族の子供より一五ミリグラムも高かった。この研究では食生活や運動量などの要因がHDL値に影響していると考えられる子供を除外して分析したため、調査結果は間接喫煙の影響と考えることができる、という。
ヌフェルド博士によると、間接喫煙が子供の血液に与える影響を調べた研究は初めてで「今回判明したHDL値の差を運動や食事で縮めるのは難しい」と指摘。子供が心臓病などになる危険を減らすために親の禁煙を強く勧めている。
1997.8.23. 毎日新聞
喫煙25年以上なら、肺がん発生ス� �ッチオン 米の大学研究
【ロンドン22日共同】22日の英紙タイムズなどによると、25年間以上喫煙すると、肺の中で肺がん発生につながる「時限爆弾」のスイッチが入り、その後禁煙してもこのスイッチは切られないという研究結果が英国の医学専門誌に紹介された。
発表したのは米ピッツバーグ大学がん研究所のジル・シーグフリード博士。それによると、非喫煙者、喫煙者37人を調べたところ、25年以上にわたり1日20本以上喫煙した人の77%の肺細胞に、肺がんを発生させる可能性のある受容体が見つかった。これに対し、喫煙期間が25年以下の人の場合、この受容体があったのは14・7%にすぎなかった。この受容体はGRPと呼ばれるタンパク質で、胎児の肺細胞を成長させるホ� ��モンと結び付く機能を持っており、この受容体が成人の肺細胞に生じると、肺細胞の分裂を促し、肺細胞をがん化させる可能性がある。
同博士は、この受容体をスイッチに例えて、いったんスイッチが入ると、入りっばなしになると指摘しており、その後禁煙しても受容体はなくならないという。同博士は、このスイッチを切る方法を見つければ、肺がん防止になるとしており、現在、この発見を確認するため大規模な調査を実施しているという。
1997.9.1. 毎日新聞
喫煙と食道がんを結びつける遺伝子 発病の可能性13倍も 信州大医学部グループが特定
信州大医学部第2外科の研究グループは31日までに、特定の遺伝子型を持つ人が、たばこを吸い過ぎると、この遺伝子型でない人の12・7倍も食道がんにかかりやすくなるケースもあるとする研究結果をまとめた。食道がんと喫煙との関係を裏付ける遺伝子が特定されたのは初めで。研究結果は、アメリカの医学専門誌「キャンサー」の9月1日号に掲載される。
同科の藤森実講師、ニ村好憲医員と、長野赤十字病院外科の横山史朗医師を中心とするグループが食道がん患者89人と健康な人137人の遺伝子を調査した。この結果、本来、たばこの毒を無毒化する働きのある「CYP1A1」と「GSTM1」という二つの遺伝子の型が食道がんの発� ��と深くかかわっていることがわかった。「CYPIAl」は「バリン/バリン型」など3種類あり、「GSTM1」は「プラス型」と「マイナス型」の2種類ある。喫煙指数(1日に吸うたばこの本数×喫煙年数)が600以上のヘビースモーカーを調べたところ、「CYPIAl」が「バリン/バリン型」の人は同じ遺伝子が別の型の人の6・63倍の高率で食道がんになっていた。さらに、「バリン/バリン型」で、「GSTMl」が「マイナス型」の人が食道がんになる確率は、そうでない人に比べ12・7倍も高かった。日本では、「バリン/バリン型」の人はl割程度いるといわれ、「GSTMl」が「マイナス型」の人は、5割程度とみられる。
藤森講師は「食道がんにかかるリスクの高さを、遺伝子検査で発症前診断できることの意味は大きい」と話し� �いる。日本食道疾患研究会会長で、千葉大医学部第2外科の磯野可一教授は「食道がんと喫煙との関孫は以前から言われてきたが、遺伝子を見つけて理論づけたことは大いに意味がある」と話している。 【長沢 晴美】
フロリダ州の疼痛管理医師
1998.1.15. 中国新聞
間接喫煙でも動脈硬化 1万1000人調査米
【ワシントン13日共同】周囲の人が吸うたばこの煙による間接喫煙の影響で動脈硬化が進むことを示す調査データを、米ウェークフォレスト大学(ノースカロライナ州)のジョージ・ハワード博士らが13日、米医師会雑誌に発表した。
同博士らは、四十五歳以上六十五歳末満の男女約一万一千人を対象に、本人喫煙、間接喫煙と、動脈硬化の関係を約三年間追跡調査した。画像診断で動脈を調べた結果、一日一箱以上のたばこを30年以上吸っている人は、喫煙経験が全くない人と比べて動脈硬化が進む度合いが平均50%高かった。現在は禁煙しているものの一日一箱以上、25年間程度たばこを吸っていた人は、全く吸ったことがない人と比べ、その度合いが平均25%高か� �た。
間接喫煙に週二十時間程度さらされる人も、周囲で禁煙が徹底している人と比べると、動脈硬化進行の度合いは平均20%高かったという。
研究グループは「いったん喫煙が動脈に悪い影響を与えると、後で禁煙しても動脈硬化を治すことは難しい」と指摘している。
1998.6.3. 朝日新聞
たばこは耳にも悪い? 難聴の危険度70%高 米で調査
【ワシントン2日=共同】喫煙者はたばこを吸わない人に比べ、老化に伴う難聴の危険性が70%も高い、との調査結果を米ウィスコンシン大のカレン・クルックシャンクス博士らが3月付の米医師会雑誌に発表した。
米国内に住む48−92歳の3753人を対象に喫煙歴調査と聴力検査を実施。博士によると、喫煙本数が多いほど難聴になりやすい傾向があったほか、喫煙者と同居している非喫煙者も難聴になりやすいこともわかった。
博士らは、喫煙で聴覚器官への血行が妨げられることなどが難聴の原因になりうると推測している。
また喫煙者に多い飲酒や心臓・血管の疾患、職場の騒音などが難聴の原因である可能性もあるため、博士らは非喫煙者と慎重に比� �した。その結果、飲酒や騒音が伴わなくても、喫煙だけで難聴の危険が増えることもわかったとしている。
1998.8.9. 朝日新聞
家族の喫煙、妊婦・子にも影響
妊婦がたばこを吸わなくても、家族の吸うたばこの煙にさらされるだけで髪にニコチンが多く蓄積されることが、奈良県立医科大学看護短期大学部の島本郁子教授らの調査でわかった。妊婦の喫煙で低体重の子が生まれやすいことが指摘される中で、家族に喫煙も問題になりそうだ。
同大の病院に通う、たばこを吸わない妊婦約百名分の髪を分析。同居の喫煙者が@部屋を換気せず1日10本以上吸うA換気しながら1日5−9本程度吸う。B数本吸うが妊婦の前は避けるーーーーの3つの場合を比べた。喫煙する家族がいない人では、髪1mgが含むニコチンが平均3ng(nは十億分の一)だったのに対し、@は約10ngAは約6ngと高い� �が出た。Bは約3ngだった。
また出生直後の赤ちゃん約70人の髪が含むニコチンを調べると、うち一人で1mg中4.3ngが検出された。この子は1922gと低体重。母親の髪も1mg当たり28ng含んでいた。母親は喫煙しないが、父親は1日約60本吸っていたという。
1998.6.20;351:1840−43. Lancet Ott A et al.
Smoking and risk of dementia and Alzheimer's disease in a population−based cohort study: The Rotterdam Study.
喫煙で痴呆のリスクは増加す る?
以前の研究で、喫煙はアルツハイマー病(AD)に対して予防的であることが示唆されている。ロッテルダムの母集団に基づいたプロスペクティブ試験で、当初において痴呆でない55歳以上の6870人で、その関連性を調査した。
ベースラインで患者は喫煙歴なし、喫煙歴あり、現在喫煙群に分類され、平均で2年間の観察期間中の痴呆症例が記録された。痴呆の診断は認識力テスト、看護人や最近親者の面接、行動神経科医による検査、および可能であればMRI検査に基づいて行われた。相対リスクは、年齢、性別、教育、飲酒量、およびアポリポタンパコE(APOE)遺伝子型に関して補正がなされた。
観察期間中に検出された146例の痴呆症のうち、105例(72%)はAD、19例(13%)は血管性の痴呆に分類され、共に年齢に比例して発病率は増加した。喫煙歴のない群と比較すると、現在喫煙群では痴呆症(RR2.2)とAD(RR2.3)の相対リスクの増加が見られた。現在喫煙群のAPOE4対立遺伝子を持つ者では、ADのリスク(RR0.6)は増加しなかったが、その対立遺伝子を欠く喫煙者では、リスクはかなり増加した。
(コメント)これらの調査結果は以前の調査結果とは異なり、喫煙者は痴呆のリスクが倍増することを示している。ADの因果関係において、APOE4遺伝子型と喫煙の相互作用の可能性について著者らが論じている。(� ��.Jarman)
1998.9.6. 朝日新聞
母喫煙で胎児に発がん物質
妊娠中に母親が喫煙をしていると、たばこから発がん物質が胎盤を通じて胎児に取り込まれてしまうことを示す確実な証拠を、米ミネソタ大のスティーブン・ヘクト博士らの研究グループが新生児の尿を調べて確認した、と発表した。
同博士らによると48人の新生児の尿を採集し、ドイツの共同研究者に成分を分析してもらった。その結果、妊娠中に喫煙をしていた母親から生まれた31人の新生児のうち、22人の尿からニコチン由来でNNKと呼ばれる発がん物質を検出したという。新生児の尿に含まれているNNKの量は大人の喫煙者の尿に含まれる量の10%に相当するとみられている。喫煙によって低体重児が生まれやすくなったり、新生児を突然死で亡くしたりする危険性が増すと考えられているが、喫煙の習慣のある女性の6割は妊娠後も喫煙を止めないという。
ヘクト博士のグループは昨年、職場でたばこの煙にさらされている、非喫煙者の尿にも同じ発がん物質が含まれているという調査結果を報告している。
1999.4.15. Medical Tribune
若年男性の喫煙は遺伝子異常の原因に
[ニューヨーク]米国では喫煙する青少年が増加しているとの報告があるなかで、ローレンスリバモア国立研究所(カリフォルニア州リバモア)生物学研究プログラムのAndrew J.Wyrobek博士らは、喫煙によって精子中の遺伝子が変異し受精能が影響を受ける可能性があることをFertility and Sterility(70:715−723,1998)に発表した。
喫煙者に過剰Y染色体
これは、チェコ共和国政府と米環境保護区(EPA)で行った生殖医療研究の一部で、チェコ共和国の18歳の男性25例について喫煙および飲酒習慣を調査したところ、喫煙者は非喫煙者に比べ、過剰染色体を含む精子を有する率が高かったという。
喫煙者10例では、精子中に過剰Y染色体が現れる割合が高く、同染色体を有する息子の父親となる確率が増加する。さらに、喫煙者では男性不妊症に関与する円形精子がより多く、全精子数はより少ないという。
健康に対する過剰Y染色体の影響は不明である。健常男性にも認められるが、精神的・心理的成長に対して悪影響があるかもしれない。
W yrobek博士は「この知見の重要性は、喫煙によって遺伝子が変異する可能性を示した点にある。さらに研究を行って、喫煙とダウン症候群などのような他の染色体異常との関連性について調査すべきである」と述べた。
喫煙習慣に対する警告が必要
男性不妊症の専門家であるコロンビア長老派教会医療センター(CPMC,ニューヨーク)泌尿器科のHarry Fisch博士は「喫煙によって精子数が減少することは知られているが、これは遺伝子異常が発生することを示した初めての研究となる。重要なのは、喫煙がわれわれが考えていたよりさらに深刻な生殖障害を引き起こすかもしれないことである」とコメントした。
研究チームによると、研究対象の� ��性は全例が健康で、18歳であったことから、喫煙者における精子異常の原因として年齢や化学物質への職業的曝露は除外されているという。
喫煙者の喫煙量は中程度(1日20本を2年間以上)であったが、飲酒傾向もあった。一方、非喫煙者15例はアルコール摂取も避けていた。
Whrobek博士らの研究チームは、喫煙を「アルコールや医療用薬剤、不法薬物などの摂取を増加させる可能性を生じるライフスタイルの一部」として認識することが重要であると警告している。さらに、アルコール摂取量よりもコニチン(ニコチン代謝物)濃度のほうが、過剰Y染色体発生に対する関連性が高いという。
子供の健康に対する父親の喫煙の影響を調査した� �前の研究では相反する結果が出ている。研究チームは、喫煙がどのようにして精子中の遺伝物質を変異させるのかは不明であるとしているが、たばこの煙には変異誘発物質として知られる化学物質が含まれている。
さらに研究する必要があるものの、研究チームは今のところ、若い男性の喫煙は将来の子供に影響を与えかねない「潜在的な遺伝子危険と考えるべきだ」と結論している。
2000.5.18. Medical Tribune Vol.33 No.20
ビタミンCの補給は非喫煙者より喫煙者で特に有益
[ニューヨーク]ビタミン補給によって喫煙の有害作用をすべて打ち消せるわけではないが、ビタミンC(Vit C)を補給すると、喫煙によって特に低下するこのビタミンの体内貯蔵量を回復させうることが、カリフォルニア大学バークレー校(カリフォルニア州バークレー)と、米農務省の一部門であるヒト身体栄養研究センター(同州デービス)との共同研究によって明らかにされ、American Journal of Clinical Nutrition(71:530−536)に報告された。
喫煙で大幅に減るVit C
報告によると、喫煙者のほうが体内のVit Cが低下している場合が多いため、Vit Cの補給は、非喫煙者よりも喫煙者で特に有益であることが認められた。この研究で用いた1日272mgという、それほど多量でないVit Cの補給でも、喫煙者には有益だった。
一般に喫煙者は脂肪の摂取量が多く、果物や野菜類の摂取量が少なく、Vit Cの摂取量は推奨1日所要量の4分の3にすぎない。非喫煙者に比べて食習慣が貧しいだけでなく、喫煙者はたばこの煙を吸い込む結果、抗酸化物質のレベルも低下している。
この研究で対象になった有志被験者は、サンフランシスコ湾地域の20〜50歳の健康な男性喫煙者で、フルーツおよび野菜類の摂取量が1日3皿以下など、食習慣の貧しい者が選ばれた。
ペースラインの血液サンプルを採取したのち、被験者グループの半数には90日間ビタミンの補給を行い、残りの半数にはプラセボを投与した。喫煙者群と非喫煙者群の食習慣はほぼ同等になるよう調整した。
Vit CやビタミンE(Vit E)をはじめ、多数の抗酸化物質のレベルを測定したが、その結果、喫煙によって大きな影響を受ける抗酸化物質はVit Cのみであることがわかった。Vit Cの欠乏は、食事の違いによるものではなかった。
この研究に参加した研究所の1人である小児病院研究所(カリフォルニア州オークランド)のLynn M.Wallock氏は、他の抗酸化物質には欠乏している様子が認められず、Vit Cのみが特異な重要性を示したことは研究チームにとって予想外だったと述べている。
同氏によると、3ヶ月にわたる補給期間後には、喫煙者のVit Cの体内貯蔵量は十分に回復されていた。補給後のVit Cレベルは、喫煙者群では非喫煙者やプラセボ群の被験者に比べて3倍も増えた。同氏らは「この補給が、特に喫煙者で効果を示したと考えてよいだろう」と述べている。
これまでの研究では、血漿中の抗酸化物質レベルに対する喫煙と食事の影響を区別することができなかった。したがって、今回の研究のおもな目的の1つは、この両者を効果的に区別することにあった。
2000.3.23. Medical Tribune Vol.33 No.12,13
喫煙者はパニック発作を起こしやすい
[ニューヨーク]たばこを吸うと気持ちが静まる、と感じている喫煙者が多いが、ヘンリーフォード機構システム(デトロイト)行動サービス部研究担当のNaomi Breslau部長らは、毎日の喫煙とパニック発作との間に関連性が認められることを明らかにし、Archives of General Psychiatry(56:141-147)に発表した。
発作発生率は2〜4倍
この研究によると、喫煙者はパニック発作の発生率が、一度も喫煙したことのない人や禁煙した人に比べて、2〜4倍に達することがわかった。これは 一般人口を対象に、喫煙とパニック発作との間の因果関係を証明した最初の研究である。
たばこに含まれるニコチンやその他の物質が、抑うつなどの精神医学的障害を引き起こすうえでなんらかの役割を果たしていることは、これまでの研究によって示唆されている。そこでBreslau部長らは、喫煙がパニック発作の原因の一部となっていないかどうかを明らかにしたいと考えた。
同部長らはこの研究結果について、2つの説明が考えられるとしている。その1つは、喫煙によって肺機能が低下することが影響を及ぼすと考えるもの。「肺が生理学的にパニック発作に引き金を引くことになるのではないか」と同部長は言う。喫煙者は息切れやその他の肺の問題を起こす可能性が高� �ため、パニック発作を起こすリスクも高くなるという。
もう1つの説明は、ヒトの脳に対するニコチンの影響によるとするものだが、これを裏づける十分な証拠は得られていない。
パニック発作とは、息切れ、めまい、動悸、ふるえ、発汗、息苦しさ、悪心、非現実感、しびれ、潮紅もしくは悪寒、胸痛、死の恐怖、発狂の恐怖などの症状のうち、4つ以上が認められている状態と定義される。なかでも息切れ、胸痛、動悸が多い、と同部長は言う。同部長によると、一般集団のうちの3〜5%がパニック発作に苦しみ、女性ではこの発生率が男性の2倍に達する。
同部長は「この研究結果は、喫煙が身体的な害を与えるだけでなく、精神の健康にも悪影響を及ぼす 可能性があることを明らかにしたものであり、これが喫煙者にさらにもう1つ確かな禁煙の理由を与えるものとなることを期待する」と述べた。
悪い食べ物の原因うつ病の研究
2000.5.11. Medical Tribune Vol.33 No.19
喫煙者は外傷リスクが高い
[ニューヨーク]軍人保健科学大学(メリーランド州ベゼスダ)のJohn W.Gardner博士らは米陸軍の新兵を対象に調査した結果、喫煙者は非喫煙者に比べて、骨折、捻挫などの身体外傷リスクが高い、とする知見を、American Journal of Preventive Medicine(18 Suppl 1:96−102)に発表した。研究は米陸軍健康増進・予防医学センターの助成を受けた。
外傷率は男性喫煙者で顕著
調査は新しく入隊した女性915人と男性1087人を対象に、8週間の基礎訓練プログラム期間にわたり実施。データは、観察、アンケート調査、身体計測、身体適性検査、企業の訓練記録、クリニック来診者のカルテから収集した。
外傷率は、女性では喫煙者が56%だったのに対し、非喫煙者は46%だった。男性では喫煙者の外傷率が顕著に高く40%、非喫煙者は29%であった。
Gardner博士はこの知見について「兵士らが喫煙によって心疾患や癌を発症するまでに10年〜30年を要するが、喫煙の有害作用はもっと早期に出現する。データから、少なくとも一部の有害作用は、若くして短期間で出現することが示されたと述べた。
年齢、体重、初期体力測定などの要因について調査後も、喫煙者の外傷リスクは非喫煙者の1.5倍以上高かった。
過去の研究で、喫煙が外傷、手術や疾患による創傷の治癒を遅らせることが示されている。また、喫煙は筋肉、骨、その他の組織での生体の修復能を妨げるため、喫煙者は外傷に弱いと考えられている。
さらに同博士らは、喫煙者は非喫煙者に比べて、疾患や外傷の既往が多いため、身体的に活動的でなくあまり健康的でないことなど、2群間における行動様式の差も原因ではないかと、考察している。
新兵は訓練期間中、喫煙を禁じられたにもかかわらず外傷リスクが高く、喫煙の有害作用が禁煙後も持続することがわかった。同博士ら は「外傷に及ぼす喫煙の有害作用は禁煙後も持続するようである」と記している。
最後に、同博士らは「身体的外傷リスクが増大すると、兵士の機敏性に直接影響するためこれらの知見は重要である。一般社会もこのメッセージに目を向けて欲しい」と強調。結論で「若年者が喫煙開始を思いとどまったり、禁煙しなければならない直接の理由が示されたことから、結果は一般社会にも有益である」と述べている。
2000.3.16. Medical Tribune Vol.33 No.11
女性は禁煙が難しい 男性より心理的依存強い
[ニューヨーク]女性は男性より喫煙に対する心理的依存が強い傾向があるようだ。女性の禁煙が男性に比べて困難なのはこのためかもしれない。バージニア医科大学(バージニア州リッチモンド)心理学および薬物・アルコール研究所のThomas Eissenberg氏らは「女性は男性よりも、禁煙による情緒不安や集中力欠如などの禁断症状からの不快感を強く感じる」とNicotine&Tobacco Research(1:317-324,1999)に報告した。
喫煙による軽快間が大きい
この研究は米国立薬物中毒研究所(NIDA)の後援によるもので、たばこ類の� �用経験がある男女を対象に、喫煙の自覚的および生理学的効果を調査した。
その結果、生理学的効果には性差がなく、男女同様に心拍数の増加や血圧上昇、皮膚温度の低下などが見られた。通常、こうした効果はたばこに含まれるニコチンの作用によるものと考えられている。
しかし、自覚的効果には性差が見られ、女性のほうが喫煙によってより大きな影響を受けていた。これが女性の禁煙が困難である理由かもしれない。今回の調査によると、たばこを2本吸うごとの喫煙欲求の低下は、男性より女性で多かった。禁断症状の不快感の低下についてはさらに大きな性差が見られた。これは、女性のほうが男性よりも喫煙から大きな軽快間と満足感を得ている可能性を示唆しており、過去の研� ��によって示された女性の禁煙の困難さを説明するものである。
調査結果に大きな性差が見られた禁断症状で最も一般的だったのは、喫煙欲求、喫煙への切迫要望、集中力欠如、情緒不安であった。
Eissenberg氏はこの知見について「種々の禁断症状発現の報告が喫煙後間もなく増加し始めることは、あまり知られていない事実である。この作用は、たばこ1本を吸った10〜15分後にさえも見られることがある」とコメントした。
女性は喫煙に高い感受性
今回の研究ではまた、男性に比べて女性のほうが喫煙の一服が小さく短時間である、という興味深い知見も明らかになった。しかし、これは必ずしも女性喫煙者のニコチン摂取� ��が男性喫煙者より少ないことを意味しているわけではない。
Eissenberg氏は「仮に、女性喫煙者はニコチン摂取量が少なく、したがって、その反復投与に対する身体的反応に限って言えば女性が受ける身体的効果は低レベルである、と仮定したとしても、それは女性の喫煙に対する心理的依存が少ないことを意味しない。実際、女性のほうが心理的依存は高い。今回の研究は、ニコチンに対する反応には性差はないが、喫煙に、女性のほうが高い感受性を持つなんらかの別の作用がある可能性を示していると思われる。今後、さらなる研究が必要であろう」と述べた。
禁煙には医療・集団の支援を
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校(ニューヨーク� �ストーニーブルック)精神医学のSheila B.Blume臨床教授は「この領域で研究が行われていることは喜ばしい。1962年に私がこの分野に着手したとき、嗜癖のメカニズムは全くわかっていなかった。しかし、今では現代的神経科学の手法によって、嗜癖性っを有する物質は、脳の、おそらくある特定の部分に至る共通の最終経路を有することがわかっている。その特定の部分とは、食物や飲料水の獲得のような生命維持に必要で、ある種喜びを得られる行動を、われわれに確実に反復させるために自然がつくり出した(発生した)部分でもある。ニコチンのような物質も脳内のこの領域を刺激する」と述べた。
Eissenberg氏は「このトピックについては今後、さらに研究を続ける必� �がある。貼付薬、ガム、スプレー、吸入剤などのニコチン補充製剤が普及することを期待する」と述べ、「最善の禁煙支援法を研究するうえで取り組むべきもう1つの重要な領域は、喫煙再開の予防である」と強調した。
2001.4.19. Medical Tribune
喫煙と腰痛に関連性
[サンフランシスコ]50年以上にわたる特定集団を対象にした調査研究が完結し、喫煙の危険は肺や心血管系だけでなく腰の骨や関節にまで及ぶ可能性があるとの結論が得られた。当地で開かれた米国整形外科医学会(AAOS)の年次集会で、ジョンズホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)のUri Ahn博士らは「腰痛の発生と過去の喫煙歴との間 には有意な相関がある」と報告した。
他の健康因子を上回る相関性
Ahn博士らは「データは喫煙により腰痛のリスクが増加することを決定的に証明するものではないが、その相関性には明らかになんらかの生理学的な根拠がある」としている。同博士らは、1947〜64年にジョンズホプキンス大学を卒業した1,300人を超える医師の追跡調査を実施した。被験者は喫煙習慣、腰痛の発生率、高血圧、コレステロール値、血圧などの健康因子に関連する質問から成る年1回のアンケート調査に答えた。特に、過去の喫煙歴と関係があると思われた脊椎疾患は、変性脊椎症、脊椎すべり症および脊柱管狭窄の3つだった。腰椎椎間板に対する影響はなかった。
同博士らは、アンケートで被験者に喫� �歴と腰痛の即往歴を項目別に示すよう求め、その相関性を解析した。その結果、喫煙、高血圧およびLDLコレステロール値の上昇には相関が認められた。腰痛と過去の喫煙歴との相対リスク(RR)は1.25だった。椎間板損傷または椎間板変形の愁訴に相関は認められなかった。腰椎脊椎症と喫煙にはRR=1.85と明らかな関連性があったのに対して、脊椎症と高血圧ではRR=1.50、脊椎症と高脂血症ではRR=1.17にすぎなかった。いずれも統計学的に有意な相関だった。
2000.11.2 Medical Tribune Vol.33 No.44
喫煙はアルツハイマー病を予防せず
[英オックスフォード]愛煙家にとっては厳しい研究データ� ��、また1つ明らかになった。以前に実施された疫学的研究では、喫煙には痴呆を予防する効果が見込めるという結論が得られた。しかし、ラドクリフ病院(オックスフォード)臨床試験・疫学研究室のRichard Doll氏はBritish Medical Journal(320:1097−1102)で「英国で実施された大規模なコホート研究の結果、そのような喫煙のメリットは確認できなかった」と報告している。
同氏らは、3万5,000人以上の男性医師を対象に調査を実施し、1951〜98年の喫煙歴のデータを集めて検討した。その結果、痴呆一般についても、アルツハイマー病に限って見ても、喫煙者でリスクが減少するといった事実は認められなかった。それどころか、喫煙者ではリスクはむし� �増加する傾向があった。ただし、重度の痴呆症に対する影響は大きくはなさそうだ。
2001.7.5. Medical Tribune VOL.34 No.27
禁煙は何歳からでもリスク低下に有効
1985年から4年ごとに開かれている国際循環器病予防会議の第5回会議(会長=国立循環器病センター・尾前照雄名誉総長)が大阪市で開催され、循環器疾患予防の現状と在り方が討論された。同会議で英国のR.Peto氏は、個々の喫煙者に送る3大メッセージとして、@喫煙によるリスクは大きい(喫煙者の半数はたばこが原因で死亡する)A喫煙者の4分の1は中年期(35歳〜69歳)に死亡するB禁煙は早ければ早いほど良いが、たとえ中年期になってからでも� �分有効である−を挙げ、現在のような喫煙パターンが変わらなければ、たばこによる死亡は増加し続ける、と警告した。
今世紀は10億人がたばこで死亡
英国人医師を対象とした調査では、喫煙者は非喫煙者と比べ寿命が約8年短いが、35歳までに禁煙すれば非喫煙者と同じ寿命になることや、禁煙したのが35歳を過ぎてからでも治癒不能な癌などを発症する前なら、その後のたばこによる死のリスクの大部分は避けられることが示された。また、心筋梗塞後でも、禁煙をすれば喫煙を続けた場合と比べて5年後の死亡リスクは低くなるし、肺癌死リスクも、例えば50歳で禁煙すると、70歳での肺癌リスクは喫煙を続けた場合と比べて半減するというデータも得られている。米国における喫煙率と 肺癌罹患率の推移により、肺癌の増加は喫煙の増加より約40年遅れて始まることがわかっている。1992年の中国人男性の1日当たりの平均喫煙本数は10本だが、これは50年の米国人の喫煙本数と同じである。中年期(35〜69歳)での全死亡に占めるたばこによる死亡の割合は、50年の米国成人と90年の中国人男性がともに12%であり、90年はその割合が米国では33%であることから、40年後の2030年には中国人男性の33%がたばこにより死亡すると予想できる。
現在、英国では20〜60歳の男女の3人に1人、中国では若年男性の3人に2人、インドでは20歳〜60歳の男性の40%、世界的には若年男女の30%(男性の50%と女性の10%)が喫煙しており、禁煙しなければこれら� �煙者の半数はたばこが原因で死亡する。この喫煙パターンが変わらなければ、全世界のたばこによる死亡は2000年の400万人/年から2030年には1,000万人/年に増加する。20世紀の100年間でたばこによる死亡は1億人だったが、現状が続けば21世紀中のたばこによる死亡は10億人に達すると試算される。成人喫煙者に禁煙させ、若者が喫煙を始めないよう、あらゆる対策を講ずることだ」とPeto氏は強調した。
2000.11.2. Medical Tribune Vol.33 No.44
高齢喫煙者は禁煙成功率が高い
[ワシントンD.C.]高齢喫煙者は禁煙の恩恵を受けないと考える医療従事者もいる。しかし、カリフォルニア大学サンデ ィエゴ校(カリフォルニア州ラホヤ)のDavid M.Burns博士らは研究レビューの結果、この見解は誤りであり、禁煙したい高齢喫煙者に対してサポートを広げる必要があるようだとしている。
サポートを求める割合が高い
Burns博士は「社会の高齢化が進むと、禁煙の恩恵を受けようと医療を求める60歳以上の喫煙者の数が増える」と指摘。喫煙と高齢者に関する広範な研究を解析した同博士は「高齢者の予防サービスを無視してはいけない」と言う。従来、高齢喫煙者は若年喫煙者に比べて禁煙を試みる率が低かった。しかし、禁煙しようとする高齢喫煙者はサポートを求める割合が高く、禁煙成功率も高い傾向にある
喫煙の害は高齢者のほうが受けやすい。喫煙は、年齢� �上昇に伴い死亡リスクや喫煙関連疾患リスクを増大させる損傷の蓄積を引き起こす。今回の研究によると、喫煙に関連した原因で毎年死亡する40万人の約70%が60歳以上である。同博士は「喫煙は思春期に"発症"し、おもに高齢期に障害を引き起こしたり死亡をもたらす"疾患"として位置づけられる」と指摘する。
喫煙者の致死的3大疾患は肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患(CAD)である。肺癌は発癌物質に曝露した細胞の損傷が長年蓄積した結果であることが多い。肺気腫を起こすCOPDは、小さな肺胞壁が長期にわたり破壊された結果起きる。
リスク低下幅が小さい
Burns博士らの解析では、高齢者が喫煙した場合、回復することが示唆されている。� ��かし、若年者が禁煙した場合ほど、十分かつ速やかに回復しない。例えば、60歳以後に禁煙した場合、肺癌のリスクは低下するが、若年者に比べて低下幅は小さく、低下が始まるのも遅い。高齢禁煙者ではCADリスクも低下するが、若年禁煙者に比べてより緩やかである。COPDを有する高齢喫煙者が禁煙しても、既に被った肺の損傷を回復させることはできない。ただ、これ以上肺を喫煙によって損傷することは防げる。
同博士によると、高齢者の禁煙の恩恵は年齢とともに小さくなると考えられるが、どの年齢でも禁煙のもたらす恩恵には疑問の余地がない。同博士は「60歳を超えても、禁煙が喫煙関連疾患の発生率に大きく影響すると考えられる。禁煙は、依然として高齢者の喫煙関連疾患リスクを抑制させる最 も効果的な方法である」と結んでいる。
ビールの消費量と肥満
2001.5.10. Medical Tribune Vol.34 No.1
禁煙後も脳卒中リスクが持続
[米フロリダ州フォートローダーデール]ニューヨーク州立大学バッファロー校(ニューヨーク州バッファロー)脳神経外科のAdnan Qureshi博士らは、当地で開かれた米国心臓協会(AHA)脳卒中会議の年次集会で、喫煙経験者は禁煙後も、なお脳卒中リスクが有意に高いと報告した。
禁煙はSAHリスクを減少せず
他の研究で喫煙経験者でも10年間禁煙すると全く吸わなかった人と同程度の"きれいな"肺になると示唆されているが、今回の研究によると、禁煙しても脳卒中・脳血管事故のリスクファクター改善には結び付かない。また、現在喫煙している者と� �煙経験者との間に脳卒中発生率の差はほとんどないという。Qureshi博士らは、1990〜97年にくも膜下出血(SAH)を発症した患者323例(平均年齢52歳)のカルテを、国民保健栄養調査から選んだ対照者969例のカルテと比較した。喫煙が独立した脳血管疾患のリスクファクターであることはよく知られているが、同博士らはロジスティック回帰分析を用いて、過去の喫煙経験と現在の喫煙はいずれもSAHのリスクファクターであることを示した。SAH患者のうち149例(46%)が現在喫煙者、125例(39%)が喫煙経験者だった。現在喫煙者のSAHのオッズ比3.4に対して、喫煙経験者のオッズ比は2.9と大きな改善を示さなかったことから、ともにSAHリスクに有意な関連が認められた。
同博士らは「今回の研究は、他の研究で認められた現在喫煙と脳卒中リスクの関連を追及したが、さらに禁煙後も脳卒中リスクが持続することを示した」と述べた。
喫煙が動脈瘤の形成
Qureshi博士は「喫煙が動脈瘤を起こすことはないが、破裂させるのではという感じはいつもあった。実際に、禁煙しても動脈瘤は消えず、しかも動脈瘤破裂リスクは依然として存在する。われわれの最近のデータは、喫煙が動脈瘤形成にも一役買っていることを示しており、これはきわめて新しい知見だ」としている。
今回の研究は禁煙後の年数を考慮しておらず、喫煙経験者には最近禁煙したばかりの人や、何年も禁煙している人も含まれる。同博士は「にもかかわらず、これほど多数の喫 煙経験者がなお脳卒中を発症しているのは驚きだ」と語った。
喫煙と脳卒中リスクを検討する大規模研究を過去に行ったエール大学(コネティカット州ニューヘブン)神経学のLawrence Brass教授は「長年喫煙し、肺にダメージを与えていながら、禁煙後早いうちに正常に戻れると考えるのは正しくない。禁煙後2年以内に肺が正常化するというのは誤りだが、喫煙の有害作用は20年も持続しないだろう」と述べた。
2002.2.21. Medical Tribune Vol.35 NO.8
喫煙は筋骨格系にも悪影響 組織壊死から四肢切断の恐れも
[ニューヨーク]米国整形外科医学会(AAOS,イリノイ州Rosemont)所属のStuart A.Hirsch博士は、喫煙と癌や心疾患の病因との関連性は長く取りざたされているが、喫煙が筋骨格系にも深刻な悪影響を及ぼすことが明らかになった、とJournal of the American Academy of Orthopaedics Surgeons(9:917,2001)に掲載された研究を引用して"Orthopaedics Update 2001"で発表した。
四肢で最も顕著
ニコチンはヒトの体内のあらゆる組織への血流を減少させる。その影響は四肢に最も顕著に現れ、組織の壊死を引き起こすため切断が必要になることもある。また� ��喫煙者では手拘縮や神経障害の発生率が高いことが判明している。
引用された研究は、Carolinas医療センター(ノースカロライナ州シャーロット)整形外科のScott E.Porter博士とEdward N.Hanley,Jr.博士の共著で、喫煙と筋骨格系疾患の関連性を調べた最近の文献を要約したもの。研究では、喫煙が骨密度、椎間板の状態、大腿骨頸部や手首の骨折が起きる相対リスク・骨折や創傷の治癒機転に悪影響を与えることを示している。
女性で骨量が減少した結果、橈骨、大腿骨頸部、椎体の骨折が起こる原因は、喫煙とエストロゲンとの相互作用によると考えられている。この作用は、喫煙者、特に抗酸化作用を持つビタミンC、Eの摂取量が低い� �者では、血中の活性酸素が増加することが原因となっている可能性がある。喫煙者ではホルモン補充療法の効果が有意に減少する。複数の研究から、喫煙が原因で骨芽細胞の機能に欠陥が生じ、結果として骨密度が減少することが示唆されている。女性喫煙者における大腿骨頸部骨折リスク要因は男性にも当てはまるという。
腰痛や創傷治癒の遅れも
特に、慢性的に咳が出る喫煙者は腰痛となる可能性が高い。これは椎間板内の圧力が増加するためと考えられる。喫煙と腰痛との生物学的関係や因果関係に対して異議を唱える研究者は多いが、喫煙が腰椎に悪影響を与えるという主張は状況証拠や事例証拠により支持されている。
喫煙によって血管や血液に変化が生じるた め、喫煙者は椎間板疾患にかかりやすくなる可能性がある。1本の喫煙本数が10本増えるごとに椎間板脱出のリスクが20%増加する。喫煙者で椎間板切除の後に持続性腰痛が生じるのは、ニコチンが血管に影響を与えるためと考えられる。
喫煙から派生する血管収縮や中等度の血中一酸化炭素濃度によって、毛細血管の血流や四肢の末梢灌流が減少し、その結果、創傷の治癒が遅れる可能性がある。治癒段階にある創傷の抗張力を決定する主要因であるコラーゲンの合成は灌流と酸化に依存しているため、喫煙により妨害される。
骨癒合不全も高率に
体内の軟組織や脈管構造に悪影響を及ぼすことに加え、喫煙は骨折の治癒機転を遅らせるという。ニコチンにさらされ� ��動物では、自家腸骨稜移植片を用いて単一レベル腰椎固定術を行った後で骨癒合不全が観察される確立は、喫煙者では非喫煙者の16倍であった。
最後に、Hirsch博士は「喫煙が筋骨格に与える有害な影響に関して公衆の知識が乏しい事をAAOSは懸念している」と述べた。喫煙は骨、筋肉、腱、靭帯、神経に重大な悪影響を及ぼすため禁煙するよう、AAOSでは強く勧告している。
また、筋骨格になんらかの症状を呈するすべての患者から、喫煙歴に関する詳細な情報を得るよう医師に勧めている。喫煙者の70%は年に1回は病院に行くため、その機を捉えて医師は患者に禁煙を指導できるはずだという。
2001.1.4. Medical Trib une Vol.34 NO.1
心発作患者は喫煙やコレステロールに敏感
[ニューヨーク]ウェイクフォレスト大学(米ノースカロライナ州ウィンストンセーラム)バプティスト医療センター(WFUBMC)内科学・公衆衛生学のJohn R.Crouse教授によると、心発作経験者にとっては、喫煙や低レベルの高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールは特別なリスクになりうる。
血管疾患が3〜4倍速く進行
Crouse教授は「われわれは、心臓病を持たない人よりも心発作を経験した人のほうが、血管疾患が平均して3[4倍速く進行することを発見した。喫煙あるいはHDLコレステロールが低レベルであることは、血管疾患の進行をさらに速め、心発作と心筋梗塞の再発を促す」と述べた。
身体の血管にどのような種々のリスクファクターが影響するかを明らかにするために、同教授らは3年以上にわたって成人280例の血管壁の厚さを超音波検査で測定した。肥厚した血管壁は、アテローム性動脈硬化症、すなわち心発作と脳卒中を引き起こす脂質沈着形成の初期微候である。
血管壁の厚さの測定は、脳への血液供給を行っている主要な血管である頚動脈で行った。この血管で研究を行った理由は、心臓の動脈とは異なり非侵襲的に測定できるからである。血管疾患は通常、全身にわたって起� �ることが明らかにされているため、頚動脈の状態は冠動脈の状態を示す良い指標となる。
同教授らは、いくつかのよく知られたリスクファクター、すなわち年齢、性、喫煙、血糖、BMI(body mass index)、人種、閉経期か否か、高血圧そしてコレステロールがどの程度、血管壁肥厚の進行に影響するかを比較した。
コンピュータによる分析を行い、それぞれのリスクファクターがどの程度、心発作経験者(1枝以上の冠動脈が50%以上閉鎖)に影響するかを評価し、冠動脈疾患のないグループへの影響と比較した。
「頚動脈血管壁の肥厚は、冠動脈疾患を持たないグループよりも、心発作を経験したことのあるグループにおいて3〜4倍速く進行した」と試験 結果を発表した内分泌学研究者であるGreg Terry氏は述べた。「この影響は、標準的なリスクファクターによっては完全に説明されなかった。このことは、おそらく遺伝あるいはわれわれが、まだ知らないリスクファクターが最初に血管病変を起こしやすくしているということを示唆している。
2つのリスクファクターが影響
心発作経験者において、2つのリスクファクター、すなわちHDLコレステロールと喫煙歴が動脈の肥厚に最も影響を及ぼしていた。
HDLコレステロールは"善玉"コレステロールとして知られているが、その理由は、高値であるほど心発作を防御しているように思われるからである。研究者らは、血管壁の肥厚の進行は、HDLコレス� ��ロール値が35mg/dL未満であると、HDLコレステロール値が54mg/dL以上の場合に比べて5倍速いことを発見した。米国心臓協会(AHA)は、HDLコレステロール値が35mg/dL未満であると最も心疾患のリスクが大きいと述べている。HDLコレステロールを増やす効果的な方法は、運動、減量、そして禁煙である。
毎日1箱のたばこを8年間吸うことは、非喫煙者よりも4倍速く血管壁が肥厚することに相当する。
「もし、患者が冠動脈疾患であると診断されたならば、これらの結果は、患者がHDLコレステロール値に特に注意を払い、さらに、もし喫煙しているなら禁煙すべきである、と助言しなければならない」とCrouse教授は述べた。
� � この研究の結果は、超音波による測定を心発作や脳卒中のリスクのある人を診断するスクリーニング法として、有用であることを示唆しているという。「動脈が肥厚する速さを測定することにより、おそらく、それが原因で起こるアテローム性動脈硬化症や心発作や脳卒中になりそうな人を予測することができる」と、同教授は述べた。
研究に参加した患者は、入院歴があり、心臓の動脈内の沈着物を除去するために心カテーテル検査を受けた成人であった。この研究では、男性と女性の割合は等しく、心血管疾患の経験者、未経験者の人数も等しかった。
2001.10.25. Medical Tribune Vol.34 NO.43
成人にも有害な受動喫煙 喘息、COPD、肺癌などのリスク高める
[独ベルリン]受動喫煙は小児喘息の原因になることが知られているが、第11回肺疾患学会(欧州呼吸器学会主催)では、今までの研究では不確定とされていた成人喘息や、重篤な呼吸器疾患である慢性閉鎖性肺疾患(COPD)、肺癌などのリスクを高めることを明確にする疫学研究が多数発表された。
女性は影響を受けやすい
フィンランド国立職業保健研究所(フィンランド・ヘルシンキ)のMaritta Jaakola博士は、受動喫煙の成人喘息などへの影響を証明するデータを紹介した。同博士らは、南フィンランドに住む718例の非喫煙者を調べた。そのうち2� �1例は過去2年半以内に喘息と診断された患者、残り487例を対象群とした。職場でたばこの煙に曝露されている人は、そうでない人より喘息発症リスクが2.16倍高く、また配偶者が喫煙する場合、そのリスクは4.77倍になることが判明した。同博士は「この研究結果は成人喘息の発症に受動喫煙が影響していることを明確に証明している」と述べた。
他の研究でも、喫煙者は男性が多いためか、女性は受動喫煙によるリスクにさらされているという。臨床生理学研究所(伊ピサ)のSandra Balducci博士がイタリア各地の非喫煙者2,335例を調査したところ、47%が前の週に受動喫煙にさらされたと答えた。これまでの受動喫煙63%は家庭で、43%が職場でのものだという。同博 士によると、夫が喫煙者の場合は呼吸困難やCOPDに罹患している率が1.4〜1.6倍高く、職場での受動喫煙はそのリスクを倍増させる。また、家庭と職場の両方で受動喫煙にさらされている場合はそうでない女性に比べて、これらの疾患リスクは2.8〜4.2倍高いことが明らかにされた。
放射線衛生研究所(独ミュンヘン)のMichaela Kreuzer博士とGSF疫学研究所(ミュンヘン)のH.Erich Wichmann博士は、女性肺癌患者の20〜30%を占めると言われている非喫煙者234例と生涯に400本以下の喫煙女性535例とを比較検討した。
その結果、職場での受動喫煙は間違いなく肺癌のリスクファクターであることが明らかになった。一方� ��夫の喫煙と肺癌発症との相関性についてはそれほど明確ではない。夫により7万6,000時間以上受動喫煙にさらされている女性の肺癌リスクは1.67倍上昇し、職場で4万時間以上受動喫煙にさらされている女性のリスクは2.67倍上昇していた。
地域により被害程度に差
同学会では欧州16カ国36施設での調査をまとめた欧州共同体呼吸器保険調査の結果も初めて報告され、受動喫煙についての調査結果がウプサラ大学生物工学センター(スウェーデン・ウプサラ)のChrister Janssen博士により紹介された。36施設のうち12施設では被験者の半数が日常的に受動喫煙に曝露されていたが、地域による差が大きく、ウプサラではわずか2%であるのに対� �、スペインのガルダカオでは54%であった。
受動喫煙者は、労作性呼吸困難や過剰な気管支反応などの症状を有するものが多く、同博士は「特に職場などの環境からたばこの煙を減少させることが呼吸器の健康増進につながるだろう」と結論している。
2002.3.21. Medical Tribune Vol.35 NO.12
喫煙は勃起不全のリスク高める
[シカゴ]ノースウェスタン大学(シカゴ)泌尿器科のKevin T.McVary准教授をリーダーとする研究グループは、喫煙する男性は非喫煙者よりも勃起不全になりやすいとJournal of Urology(166:1624−1632 ,2001)に発表した。
同准教授らの研究によると、喫煙と冠動脈疾患および勃起不全との間には強い相関関係にあることが認められた。勃起能力に対するCADや高血圧の悪影響が喫煙によりさらに強まることが示された。しかし、元喫煙者の勃起不全の有病率は喫煙したことのない男性と違いはなかった。
同准教授は、ペニスの血管系は心・腎・脳、そしておもな血管系と同じ変性性疾患に罹患すると述べた。喫煙は血液の凝固能変化を及ぼし、血管収縮とアテローム動脈硬化症促進することにより高血圧を亢進させる。そこで、高血圧治療のための薬剤がさらに必要となり勃起不全を誘発することになる。
喫煙が勃起不全をもたらす機序は不明だが、血管内膜の細胞� ��なかでペニスの勃起に関与するおもな"化学メッセンジャー"である一酸化窒素(NO)の産生に喫煙が悪影響を及ぼすという証拠がある。NOはまた、心血管の健全さやアポトーシスの防止に重要な役割を果たしている。
今回の研究結果から、勃起不全が喫煙やそれに関連した健康リスクにつながっていることが示唆されたが、勃起不全の臨床ガイドラインを作成するためには基礎的および臨床的研究を行って喫煙の影響の正確なメカニズムを明らかにする必要があろう。
米国では3,000万人以上が勃起不全であると推測される。
ワシントン大学(ワシントン州シアトル)やマクギル大学(カナダ・モントリオール)の研究者および北米性医学学会の会員も今回の研究に� �献した。
2002. 4.25. Medical Tribune Vol.35 NO.17
術後の禁煙で合併症リスクが低下
[独ギーセン]喫煙者が手術前の6〜8週間に禁煙すれば、その努力は術後合併症発現率の明らかな低下という形で報われそうだ。Bispebjerg大学病院(デンマーク・コペンハーゲン)麻酔科のAnn M.Mφller氏らは、節置換術を控えた患者120例を対象に、術前の禁煙ないし節煙が術後の合併症発現率に及ぼす影響を検討し、その成果をLancet(359:114−117)で報告している。
被験者の半数には、手術予定日の6〜8週間 前から禁煙指導やニコチン補充療法を行い、禁煙させるか少なくともニコチン摂取量を50%以上減少させるという"介入"を行った。その結果、介入群では術後の合併症発現率が18%だったのに対し対象群では52%であった。介入効果が最も著だったのは、術創関連の合併症(5% vs. 31%)および心血管系の合併症(0% vs. 10%)であった。さらに平均入院日数は、介入群は11日であったのに対し、対象群では13日であったという。
2002.10.17. Medical Tribune Vol.35 NO.42
喫煙とうつ病の関連をミシガン大学で調査
[米ミシガン州アナーバー]米疾病管理センター(CDC,ジョージア州アトランタ)の統計によると、喫煙者は男女ともに非喫煙者と比べて平均で約13〜14年早死にし、年間約43万人の米国人が喫煙関連疾患で死亡している。そこで、ミシガン大学保健システム(アナーバー)ニコチン研究所は、人生をたばこで台なしにしてしまいそうな人を特定しようと� ��くの研究を実施している。その1つが喫煙とうつ病の関係を見るものである。
喫煙に"自己投薬"説
ミシガン大学行動医学プログラムの責任者で精神医学心理学のOvide Pomerleau教授によると、喫煙はさまざまな観点から見て深刻な問題である。喫煙関連肺癌で死亡する女性の数は、乳癌で死亡する女性の数を上回り、喫煙関連疾患の治療や労働損失など、経済的損失は年間1,000億ドルにのぼる。さらに喫煙関連疾患の多くは、肺気腫、肺癌、膀胱癌、口腔、喉頭癌などのように、喫煙者に多大の苦痛を引き起こす。
喫煙を始める理由としては、@新しい経験を求める気持A仲間のプレッシャーに弱いBニコチンがもたらす感覚が好き−などが挙げら� �るが、うつ病の傾向があることもその1つである。
同教授らは、うつ病と喫煙の関連を解明しようと研究中であるが、1つの説明として"自己投薬"説を挙げている。ニコチンは、うつ病に関与する神経伝達物質系に短期の有益効果を及ぼす。このため、たばこを吸うことで抑うつ的気分が軽減されるというものだ。
禁煙でうつ病が悪化も
Pomerleau教授は「一般にたばこの効果は非常に短く、もちろん処方された抗うつ薬の比ではない」と述べた。一方、禁煙はうつ病を引き起こしたり、悪化させることもある。喫煙とうつ病双方に、おそらく遺伝子レベルで影響を与える共通の因子の存在を示唆する証拠(うつ病になりやすい人は喫煙の感受性も高いなど)も ある。この仮説が正しいとすると、うつ病患者が禁煙を試みることにより、うつ状態が悪化してしまう。
同教授は「とりわけ臨床的に診断されたうつ病の既往がある人が禁煙する場合、なんらかの介入策と予防策を付け加える必要があろう。医療従事者と禁煙について話し合ったうえで、上市されている薬剤による介入を考えるべきだ」と述べた。
同大学保険システム・ニコチン研究所は、多くの喫煙に関する研究を実施中だが、特にニコチン依存症になりやすい人とそうでない人がいるメカニズムの解明に焦点を当て、喫煙の感受性が高い人とそうでない人の違いを解明しようとしている。
現在進行中の試験では、うつ病の既往のある喫煙者とない喫煙者を対象に、ニコチンに対� �る行動的反応や喫煙または禁煙するときにうつ病の有無により反応が異なるか否かなどを突き止めようとしている。
2003.4.3. Medical Tribune Vol.36 NO.14
禁煙や節煙で閉経後女性の骨減少に歯止め
[米コネティカット州ファーミントン]コネティカット大学(ファーミントン)のCheryl Onchen博士は、6週間の禁煙または喫煙量を大幅に減らした閉経後女性では、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と骨吸収マーカー(NTX)という2種類の蛋白質の血清濃度がそれぞれ8%と5%減少したが、同時期に、喫煙を続けた女性群では、この2種類の蛋 白質濃度が上昇していたとNicotine and Tobacco Research(2002;4:451−458)に発表した。
骨折リスク増大の原因を説明
Oncken博士は「この結果は、喫煙が閉経後女性の骨粗鬆症の原因となることを部分的に説明している」と述べている。
喫煙が骨減少および骨粗鬆症による骨折の長期的リスクを増大させる事実は知られていたが、これが骨新生の減少によるものか骨代謝の増加によるものかは不明であった。
同博士らは喫煙が骨に与える影響を特定するため、喫煙習慣のある閉経後女性を、@喫煙本数を減らす療法(1セッション2時間)を3回受けた群と、A6週間後に行われた同じプログラムへの参� �を待つ間に喫煙を続けた群に分け、エストロゲンとテストステロンの濃度や、これらのホルモンを結合して作用するSHBG因子を比較検討した。また、骨形成か骨破壊のいずれかを示す複数の蛋白質マーカーを調べた。両群とも、エストロゲン補充療法を受けている女性が含まれていた。
その結果、両群間で異なっていた因子は、上記2種類の蛋白質だけだったという。しかし、@群の女性の大多数は完全な禁煙が守れず、単に喫煙本数を減らしただけだったため、観察された影響が小さかったのではないか、と同博士は推測している。
今後の研究ではさらに長期にわたり禁煙を行った女性を対象に、この2種類の蛋白質、またはこれ以外の骨蛋白質の濃度変化が、骨粗鬆症による骨折の発生率と� �関するかを検討すべきとしている。
2002.9.5. Medical Tribune Vol.35 NO.36
少量喫煙でも心疾患リスクが増大
[米メリーランド州ベセズダ]聖ビンセント病院カトリック医療センター(ニューヨーク)のJohn A.Ambrose博士らは、1日1〜2本の喫煙でも心疾患につながる生物学的プロセスを速やかに開始させるとJournal of the American College of Cardiology(39:1758−1763)に報告した。
受動喫煙でも同等の内皮障害
Ambrose博士は「一般にたばこを少し� ��らい吸っても問題ないと思われているが、それは間違いだ。われわれの結果は、少量喫煙でも血管系に損傷を与えることを示している」とコメントした。
これまでの研究は、血管内皮の拡張能を喫煙が低下させることを示唆している。同博士らは今回の研究で、アテローム動脈硬化として知られる危険なプラーク形成第1段階である内皮の障害が、たばこの本数に比例するか否かを検討した。
対象は非喫煙者8例、1週1箱未満の少量喫煙者7例、および1日1箱以上の大量喫煙者7例で、喫煙以外のアテローム動脈硬化リスクファクターを有する者は皆無だった。対象者における血管内皮の機能不全を評価するため、in vivoおよびin vitroの実験を用いた。
その結果、た� �こを何本吸ったかは重要でなかった。大量喫煙者と少量喫煙者間にの内皮機能に有意差は認められず、喫煙者全例が非喫煙者に比べて有意に内皮機能が障害されていた。これは、能動喫煙曝露は少量でもアテローム動脈硬化の初期の病態生理学的指標の1つに有意な影響を及ぼすことを示す。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(カリフォルニア州サンフランシスコ)のStan Glantz博士によると、今回の研究は、少量の喫煙に対しても血管の感受性が非常に高いという説に重要な根拠を付け加える。同博士は「軽度の喫煙、そして他の研究によると、受動喫煙は、大量喫煙と同等に内皮機能を障害する。内皮機能が障害されると、心筋の酸素需要の変化に対処しきれなくなり、心臓発作のリスクを増大 させる。この影響はたばこの本数に比例するわけでなく、たばこ曝露は少量でも有害である」と説明した。
2003.4.17. Medical Tribune Vol.36 NO.16
心筋梗塞後の禁煙 左室保護に働く可能性
心筋梗塞(MI)後も喫煙を継続する患者は少なからず存在するが、たばこの主成分であるニコチンは、冠動脈の収縮や創傷治癒の障害により梗塞領域を拡大し、左室リモデリングを促進する危険性がある。京都大学大学院心臓血管外科の野本卓也氏らは、ニコチンがMI後の左室機能に及ぼす影響を、SDラットを用いて検討。MI後の禁煙は左室保護に働く可能性があることを報告した。
� � ニコチンは左室機能を障害
方法は、SDラットの左前下行枝結紮によりMIモデルを作成し、結紮1週間前から4週間後までニコチンを投与したNic投与群、結紮後ニコチン投与を中止したNic中止群、ニコチンを投与しないsham群に分け(各8例)結紮後の左室機能の変化を比較検討した。ニコチンは33mg/L(約3.3mg/kg/日)の飲料水として与えた。
その結果、SBPは、Nic投与群では結紮後に低下したまま推移したが、他の2群は徐々に上昇し、4週間後には有意差が認められた。
左室拡張終期容積、左室収縮終期容積は3群とも漸増し、4週後、Nic投与群では他の2群よりも大きく、左室収縮終期容積に有意差が認められた。4 週間後の左室最大収縮能は、Max.+dp/dt,E−maxともにNic投与群がsham群に比べ有意に低く、Nic中止群はその中間であった。左室拡張終期圧は、Nic投与群が他の2群に比べ有意に大きかった。
組織学的所見では、Nic投与群はsham群に比べ梗塞領域の組織の菲薄化が認められ、創傷治癒がニコチンにより障害されていることが推察された。Nic投与群の左室壁厚左室重量はいずれもsham群より有意に少なく、Nic中止群はその中間であった。
また、酸化ストレスについても8−hydroxy−2´deoxyguanosine indexを用いて評価したところ、Nic投与群では他の2群より有意に高いことが認められた。ニコチン自体が� �化ストレスを直接的に増加させることが報告されており、心筋においても同様のことが起こったと考えられるという。
以上から、野本氏は「ニコチンはMI後の左室収縮能だけでなく左室拡張能をも障害することが認められた。しかし、MI後にニコチン投与を中止すると、その障害の悪化程度は軽減したことから、MI後の禁煙は左室保護に働くものと考えられる」と述べた。
2003.4.17. Medical Tribune Vol.36 NO.16
多発性無症候性脳梗塞(SCI) 喫煙が最も重要な危険因子
無症候性脳梗塞(SCI)を有する例は、非SCI例に比べ脳卒中の発症率が高いことが認められているが、SCIは脳ドックでの脳MRIやCTで発見するしかない。自治医科大学循環器内科の江口和男氏らは、SCIハイリスクの一般集団を対象に行った検討から、多発性SCIの最も重要な危険因子は喫煙であることを発表した。
単発性SCIに比べ喫煙率高い
� �江口氏らは、佐賀県西有田町の40歳以上の地域一般住民で実際に健診を受けた1,511人のうち、SCIのハイリスク群170人を抽出し、脳MRI、心臓および頚動脈の超音波検査に加えて、尿中微量アルブミン測定を実施した。なお、ハイリスク群は、次の9項目のうち3項目以上該当する場合とした。すなわち、@血圧140/90mmHg以上A総コレステロール値250mg/dL以上B心電図上、左室肥大CHbA1c6.5%以上D蛋白尿Eウエスト/ヒップ比(男性0.95以上、女性0.80以上)F30本/日以上の喫煙Gエタノールで84mL/日以上の飲酒H脳卒中の家族歴あり。
脳MRIの結果、SCI有病群が75例、非有病群は95例であった。SCI有病群は非有病群に比べ、年齢、血圧 、左室重量係数、頚動脈プラークスコア有意に高く、喫煙率は高い傾向が認められ、性、糖尿病有病率、BMI、また血液・尿検査値については両群間に有意差は見られなかった。
単発性SCI群32例、多発性SCI群43例、非SCI群95例に分けて比較すると、多発性SCI群は非SCI群に比べ年齢、男性の割合、喫煙率、血圧値、左室心筋重量が有意に高く、単発性SCI群に比べ男性の割合、喫煙率が有意に高かった。
ロジスティック回帰分析によりSCIと多発性SCIの危険因子を検討した結果、SCIは頚動脈プラークが関連因子であり、多発性SCIでは喫煙が最も重要な独立した危険因子であり、オッズ比はそれぞれ2.33、3.48であった。
以上� ��ら、同氏は「SCIは動脈硬化性要因をベースに起こり、多発性SCIではそれに加えて、フィブリノゲンや血液凝固因子、血小板凝集、ヘマトクリット値上昇などさまざまな喫煙による要因が関与していると考えられる。多発性SCIは臨床的に死亡率や脳卒中発症率、痴呆のリスクを増大させると報告されており、禁煙によるSCIの多発性を予防することにより、これらのリスクを低減させる可能性が示唆される」と述べた。
2003.4.10. Medical Tribune Vol.36 NO.15
妊婦の喫煙が乳幼児突然死症候群の一因
[ニューヨーク]王立小児病院(オーストラリア・ハーストン)呼吸器内科のAnne Chang博士らは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが喫煙者の小児で増大するのは、子宮内たばこ曝露による遅発性の覚醒反応のためという新たな根拠をArchives of Disease in Childhood(88:30−33)に発表した。
NREMに特異な行動覚醒反応
Chang博士らは、乳児における睡眠・覚醒パターンをモニタリングした� �果、子宮内でたばこに曝露された乳児のノンレム(NREM)期に特異な行動覚醒反応が認められた。同博士らは「これまで、SIDSに関するさまざまな機序が提議されてきたが、一貫した知見は子宮内でのたばこ曝露が有意な素因となることである」と指摘している。
今回の研究は妊娠中に喫煙していた母親と妊娠中に喫煙しなかった母親から生まれた乳児(週齢8〜12週)それぞれ10例、計20例をモニターしたもの。8〜12週は正期出産時で最もSIDS発症の多い週齢である。乳児は全例正期産で、健康であった。
同博士らはまた、母乳栄養か人工栄養か、両親の喫煙習慣、収入と仕事、産後のうつ病の程度などSIDSリスクに影響を及ぼすとされている要因についても評価した 。乳児のレム(REM)期とNREM期に標準化連続聴覚刺激を両耳に加え、複合睡眠ポリグラフを用いて乳児の脳波を10〜12時間モニターした。室温、体位、おしゃぶりの使用あるいは物音など、睡眠環境は管理されていた。
NREM期に覚醒反応認めず
その結果、子宮内でたばこに曝露されていた乳児5例ではNREM期に行動覚醒反応は認められなかったが、非曝露乳児では覚醒反応が認められた。しかし、REM期、ならびに夜間複合睡眠ポリグラフのパラメーターには両群間における差異は認められなかった。
Chang博士らは「以前の研究では、妊婦の喫煙はSIDSの最大30%に関与していることが示された。しかし、今回の研究は子宮内でたばこに曝露� ��れると、覚醒を支配する乳児の神経呼吸器系に損傷を与えるという一連の根拠をさらに支持するものとなった」と結論した。
2003.5.15. Medical Tribune Vol.36 NO.20
受動喫煙で小児の齲歯リスク増大
[米ニューヨーク州ロチェスター]ロチェスター大学医療センターPediathinkのC.Andrew Aligne博士らは「4〜11歳の小児3,531例を対象とした研究から、環境喫煙(ETS)と言われる受動喫煙により小児が齲歯になるリスクが増大することがわかった」とJAMA(289:1258−1264)に発表した。
乳歯に有意な関連性
Aligne博士は「ETSと小児の齲歯リスクには関連性がある」と指摘し、「受動喫煙を 減少させることは、さまざまな医学上の問題を予防するのみならず、小児の口腔衛生を向上させるためにも重要だ」と述べている。
同博士によると、乳歯は齲歯がある小児の25%は、ETSにさらされなければ齲歯にならなかった可能性がある。
今回の研究は、1988〜94年に実施された第3次国民保健栄養調査(NHANESV)から得られた横断的データを考察したもの。これは、およそ4,000例の小児を対象に健康診断と各家庭での面接が実施されたNHANES口腔衛生データとしては最新のものである。サンプルは米国の全人口を代表するように抽出され、ETSおよび齲歯の存在を評価するために客観的な測定法が使用された。
同博士は「対象 となった小児の25%には未治療の齲触歯面が1か所以上あり、33%の小児には充填歯面が1か所以上あった。一方、53%の小児は受動喫煙と一致する濃度のコチニン値を示した」と指摘。「血中コチニン濃度の上昇は、乳歯の齲触歯面および充填歯数の双方と有意に関連していたが、永久歯との関連性は認められなかった」と言う。
コチニンはニコチンの代謝産物で、ETS被曝の程度を推測するため血液検査で調べることができる。また、家庭の貧困および教育レベルの低さは、小児が齲歯と充填歯の両方を持つリスクの増大と有意に関連していることがわかった。
砂糖の摂取量は関連しない
Aligne博士は「興味深いことだが、砂糖の摂取量の多さは齲触歯面または充填歯面に口腔疾患が形成されるリスクの増大と関連していなか� �た」と指摘した。さらに、小児の性別もリスク増大と関係がないことが判明した。相関の尤度は乳歯のほうが永久歯より大きく、永久歯における相関性は統計学的有意性を満たしていなかった。
砂糖の摂取量と小児の性別は、永久歯の充填歯面あるいは未治療歯面と関連していなかった。しかし、乳歯ではコチニン濃度と齲歯が有意に相関していた。
同博士は「たばこの煙は有毒という今回の研究結果が日本の医師に伝えられていると聞いて喜んでいる。歯科医にもニュースが伝わっていることで、受動喫煙の害を歯科医が親に教えることを期待している」と述べた。
さらに「最終的には一般市民にこの知見を広めることが最も大切である。このニュースを聞いて何 人かの親が禁煙することで、喫煙との関連が指摘されている乳幼児突然死症候群(SIDS)を1例でも防ぐことができれば素晴らしいことである」と指摘した。
ETS被曝には閾値が存在
今回の研究では関連性の機序を調査していないが、Aligne博士は「受動喫煙が齲歯の原因となる生物学的経路はいくつか考えられる」と述べている。
研究チームは齲歯とETSの関連に注目した研究について文献検索を実施したが、1件発見したにとどまった。それはS.Williams氏らが英国で実施した英国食事・栄養調査で、Caries Research(2000;34:117−122)に発表された。同研究は3歳児と4歳児のみを対象としたもの� ��あるが、結果はロチェスター大学の研究結果と「一致している」という。
今回の知見から、同博士は「一般に小児の血中コチニン濃度と乳歯に齲歯が存在する可能性は、複数の潜在交絡因子の調整を行った後でも、用量反応関係にあることが示唆された」と述べ、この関係は年齢、性、人種、所得、居住地、歯科への受診頻度、血中鉛値に関する調整後も存続していたと付け加えた。
ただし、血中コチニン濃度が最高値であった小児と2番目に高かった小児を比較すると、齲歯リスクに差はなかった。同博士は「おそらく、ETS被曝には閾値が存在し、閾値を超えると小児の齲歯リスクはそれ以上増大しなくなるのではないか」と推測している。
母親の禁煙を最� �先目標に
Aligne博士は、血中鉛値と齲歯の関係についても研究を行う必要があると指摘。「自分から望んで受動喫煙にさらされている小児はいないし、小児をETSに曝露すべきではない。最悪の受動喫煙は、妊娠中の母親の喫煙によるものであるから、母親の禁煙を予防の最優先目標にすべきである。言うまでもなく、住居や車をたばこの煙で充満させることは、小児の健康に有害である」と述べている。
同博士は「禁煙を補助するテクニックは進歩し続けている。これらのテクニックを、禁煙しようと考えている人、特に幼児を持つ親に提供すべきである。患者に面と向かって禁煙を勧めることを避ける医師が多いが、親は子供の最善の利益を望んでいるから、子供と自分の健康 に関心を寄せる専門家に耳を傾けるだろう」と付け加えた。
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